いまさら漫画を描く人のための心技体ー技編③ー会話と感情編

「いまさら漫画」をやりたい人のための「心技体」。
今回は「技編」その③、今回はキャラクターの会話について。

前回コマ割りの方法について軽く書いてみましたが、
それでもまだまだ漫画が描けない。いや、面白くならない

自分はまず文章でプロットを書いてから
ネームの形にして漫画を起こしていくのですが、
自分が脳内で思い描いていた素晴らしい漫画が
実際に出力されるかというとそんなことはない。
典型的な例としては、このようなことが起こります。

ー主人公の独白(ひとりごと)がずっと続いてしまう
ー淡々と会話しているだけで重要なポイントがわかりにくい
ー気づくとキャラクターが無表情、何考えてるのかわからない
etc

なので、今回の記事で書きたいのは、
ひとりごとをやめさせる方法
会話を面白くする方法
無表情をやめさせる方法についてです。
これは
物語をどのように成立させるか?
どのように演出するか?
という問いでもあります。

4-1、まずは相手に質問をしろ

独り言を止めるには対話をさせればいい。
これはひとまず結論です。
しかし、コミュ障なので対話のしかたがそもそもわからない。

対話の基本はなんでしょうか。
それは、質問と回答です。
これは現実の問題として考えてみてください。

たとえば恋愛指南本とかで
相手のことを質問しなさい
相手に喋らせなさい
相手に興味を持ちなさい(少なくとも持ってるふりをしなさい)

みたいなことが書いてあると思います。

あるいは面接。
知らん人のことを知るためには、まずは質問をしないといけない。
漫画でも、キャラクターの気持ちを引き出すためには
何か問いかけをする人が必要なのです。
最近描いていたページです。なんか対話しています。
自分は文章から漫画を起こしているせいか、ひとりごとパートが増えがちなので
質問→答えるのパートを可能な限りはさむことにしています。
質問の仕方や答え方にも個性が出るので、この人物はどんな話し方をするんだろう、
どんな人なんだろう、ということは常に考えなければなりません。

また、重要なのはキャラクターの魅力に迫ることで、
魅力を引き出す質問になっていなければ盛り上がりません。
わたしも、キャラクターに質問を投げかけさせるときは
なるべくキャラクターの謎、物語の謎に迫るものにすることにしています。

独白を止めるためには、質問から掛け合いを生みましょう
これが方法の一つ。

4-2、対話じゃなくて喧嘩させろ

質問から生まれる掛け合いは、
場面を作るうえで最もスタンダードな解決法です。
しかしそれでも、ただの対話シーンでは
面白さのピークが訪れることはないでしょう。

何故なら、対話の中では、真にその人物の本質は出てこないからです。
人間が嘘をつけてしまうのと同様に、キャラクターも素直な人ばかりではなく
大なり小なり嘘をつきながら、生きています。

ドラゴンボールのフリーザでたとえてみると
「ホッホッホ、ザーボンさん、ベジータを仕留めてきなさい」
と言っているシーンと
「この虫けらどもめ!!じわじわとなぶり〇しにしてやる!!」
とぶち切れているシーン、盛り上がるのはやっぱり後者なんですよね。
うわあ、敬語キャラは嘘なんだあってなるわけです。

ベジータで言うと
「はっはっは、俺様に一撃食らわせたら遊園地に連れてってやるぞ」
と、穏やかなお父さんやってるベジータよりも
「貴様ともう一度戦いたかったんだ!!!〇してやるぞカカロット!!」
と、激情ぶつけているベジータの方が盛り上がるわけです。
ベジータは複雑な人間なので、本音と本性があべこべなんですが。

ともかく、キャラクターの本性が見える場面にこそ
キャラクターの面白さ、場面の面白さが噴出すると思います。
嘘や上っ面の言葉ではなく、本当の言葉って何だろうと考えるわけです。

ではその本性を暴くために何をするのかと言えば
キャラクター同士を喧嘩させてみる、というのを提案します。

殴り合いの喧嘩シーンを描けというわけではなくて、
意見が対立している人同士で意見を戦わせてくださいという意味です。
先ほどフリーザとベジータの例でもそうでしたが、
怒っているときにこそ、人は真に迫る言葉を吐くように思います。

自分が描いたもので特に気に入っているページです。
説明しなくてもわかると思うのですが、
このツインテールの方は、冷徹な人間ではないのにも関わらず
冷徹な判断を下さなければならない状況にあります。
だからこそ、怒り、歯を食いしばりながら、
甘いことを言う人間に怒るのです。

怒りには魅力が現れます。

ただ、これを表現するためには、
描いている人間も本当に怒っていないといけません。
書き手が嘘や上っ面でそれをやろうとすると
どこか空々しいセリフになってしまうので。
本気で共感しながら恥ずかしがらずに
書いていくのが良いと思います。

検討してみるのはいかがでしょうか。

4-3、自分が表現しやすい感情は何か?

最も盛り上がりやすい場面作りが喧嘩であり、
怒りのシーンだということは疑っていませんが
実際問題、怒ってばかりではいられないと思うので、別の方向性も検討しましょう。
そもそも、あまり怒らない人は怒りを描くのは難しいと思います。

要は、キャラクターの感情が噴出する瞬間
魅力のピークポイントなわけですから、
噴き出す感情は怒りじゃなくて、喜びでもいいわけです。
哀しみでもいいわけです。
自分の場合は基本的に人生がつらいので
辛みが噴出した漫画を描きがちです。
自分は二次創作の人間なので、あまり都合のいいことはできないのですが、
それでも感情面で嘘をつくのは難しいと思います。

読んでいる皆さんはいかがでしょうか。
嬉しい、楽しい、幸せだ、
悲しい、悔しい、寂しい、失望、喪失、落胆、
恐怖、不安、驚き、戦慄、絶望、
恥ずかしい、切ない、心苦しい、

どんな感情でもいいので自分を振り返って、
自分の表現できる感情を確認してください。
そして、持ち手札からもっとも強い感情を
創作のクライマックスにぶつけてみましょう

チェンソーマンのデンジくん風に言えば
みんな強い感情持ってていいなあ!
感情バトルしようぜ!感情バトル!
なわけです。

辛い感情しか持ち合わせていない方は
たとえ一般受けしないとわかっていても、辛い漫画を描き続けてみましょう。
同じ気持ちを共有できる人間がきっと読んでくれるはずです。
自分の感情に嘘をついて楽しい漫画を描くよりはおそらくマシです。

今回のまとめ

ーひとりごとをやめさせる方法
質問をなげかけるパートを作りましょう
ー会話を面白くする方法
いったん、怒らせて、喧嘩させましょう。
ー無表情をやめさせる方法
感情に沿った漫画を描きましょう。

次はおそらく、絵の話をします。
技編はまだ続く。

(啄む亭血液法師)

 

いまさら漫画を描く人のための心技体ー技編②ー特殊なコマ割り

(前置き略)

ここでは特殊な漫画コマ例を紹介したいと思います。

前回、コマ割りについて基本は3段構成にし、
決めシーンでは2段、対話が多いシーンでは4段にするのがいいと書きました。
また段分けの方法としては、1段で一つの時間⁼感情が動いているようにすると
書き手も読み手も整理が楽だという話もしました。

正直、それ以外の段数はほとんど使い道がないので、
想定しなくてもいいとは思うのですが、検討してみるのは面白いかも。
というかわたしがコマ割りを考えるのが好きなだけです。

さて、自分自身は真正面から1段と5段をやってみた例がないのですが、
いちおう、検討した痕跡があったので、紹介してみます。
ー5段のページってどんな感じ?

段ごとの時間⁼感情の分節としては、
①図星をつかれた
②と③、困惑と衝撃
④状況変化
⑤↑に対する反応

という感じみたいです。
特殊な状況なので、どうしても段数が増えてしまったのですが、
それでも②と③はコマが重なっているだけあって、ほぼ同じ時間が流れています。
心情的にも②と③はほとんど変化はないです。

考えられることは、5段はやっぱり多いってことです。
5段構成にするときは最低でも1段を補助的な役割にとどめるか、
いっそページを分けた方がよさそうです。
読者もついていけなくなると思うし、じぶんも混乱してくると思います。

わたしの場合は、目まぐるしい状況変化についていけない感じが出したかったので、
無理やり1ページ内に収めたのですが、ちょっと厳しいなあという気持ちもあります。

ー1段のページってどんな感じ?

まずは単純に、キャラをアップで描いて
衝撃を表すワンピース空島編のエネルみたいな例がありますね。
それは説明するまでもないので、今回は
コマぶち抜きの人物を用いた特殊な1段をみていきましょう。

「いやだから4段もあるじゃん」と思ったかもしれませんが、
コマぶち抜き人物がいるおかげで、実際は一つの時間しか流れていません
だから実質1段。1段だと思う。。。ごにょごにょ

わたしの漫画のページを例にするとわかりにくいかもしれないので、
「バキ コーラ」でググって出てきた画像を見てください。
これは間違いなくコマぶち抜き人物を用いた特殊1段ページだと思います。

バキがコーラを飲んでいるという一つの時間が初めにあって
その中に「炭酸抜きコーラについて解説する」という
別の内的時間が流れている。という構成と言えます。
――大したものですね。

コマぶち抜き人物の手法は特殊っちゃ特殊ですが、
使っている人がとても多い、基本の一つだと思います。
人物をダイナミックに描いたうえで、状況も詳細に描けるので
見た目もよく、中身のバランスも良い……
テニスの王子様とかでも結構使ってたんじゃないかな。たぶん。

ただし、コマぶち抜き人物のページをやるには条件があります。
1ページ分の高さが使えるとなると、ほとんどの場合、
人物の全身を余すことなく描くことになります。
当然の帰結として、人物の全身像を描けないと苦しい思いをします(体験談)。
多くの方は、顔を描くのが一番得意で、次がバストアップ、
全身を描くのはちょっと苦手だと思うので、練習したうえで使いましょう。

あるいは、コマぶち抜き人物を使って、
ページ自体は2段とか3段構成にしましょう。
コマぶち抜き、を多用していた時期があるので見てみましょう。

 

これらを描いた時はなんか、「人物がコマを飛び出してるとお洒落だな…」くらいの認識でした。
ただ、「コマぶち抜き人物と、それが跨っているコマでは同じ時間が流れている」
という基本原則はかろうじて意識しているみたいです。

ーそのほか特殊例
コマ割り、とりわけ段組みの方法についてこれまで書いてきたんですが
実際に漫画を読んでいると、その方法をしっかり守っている人ばかりじゃないんですよね。
個人的に、コマ割りはそれだけで一つのアートだと思っているんで、
本当に思いもよらないやり方がたくさんあります。

これは最近描いているページですが、
明確に段分けしていなかったり(左)
完全に縦割りしてみたり(右)、
やったことがないことに挑戦してみてます。
やっぱり一回取り入れてみないと
気が付かないことがあります。

面白いコマ割りをもっと考えたいという方は
有名な作品をコマ割りに注目して眺めてみると
なにかのアイデアが浮かぶかもしれません。
段ごとにどれくらいの文字数があるだろう、
吹き出しはいくつあるだろう、とか。
プロのバランス感覚を学びましょう。
コマ割りの意図を分析してみましょう。
すると、コマ割りは自由に楽しくできるようになると思います。

コマ割りを考えるうえで個人的なオススメとしては、
ハンターハンター、チェンソーマン、呪術廻戦です(すみません、ジャンプっ子なんです)。

呪術廻戦は、色んな漫画のストロングなコマ割りを
かなり研究して取り入れてる感じがあるので、
素晴らしいコマ割りの見本市のようです。

チェンソーマンはオシャレ割りのぎりぎりを攻めているので
漫画慣れしていないと内容理解が追い付けなくなりますが、
コマ割りはここまで自由にできるんだ、という気持ちになります。
印象的だったのは、人間の首や腸でコマを割っていたことです。

ハンターハンターはもう巧過ぎて言語化できないです。
よく読み返すのは25巻と34巻です。

心情描写に関するコマ割りとしては
岩明均先生の漫画がオススメです。作品は寄生獣とヒストリエが有名。
基本のコマ割りは平坦なことが多いのですが、
夢の中の描写と心情描写が異常に上手いです。
おすすめはヒストリエ3巻、4巻、10巻です。
どこがおすすめのシーンかは一発で分かります。

あとはエロ漫画です。真面目に。
エロ漫画のコマ割りは大抵めちゃくちゃ面白いです。
エロ漫画はその特性上クライマックスのシーンが長いので
ダイナミックなコマ割りが多いですし、読み手に直接的に訴えかける方法を教えてくれます。
結局は欲望に忠実に描かないと真に迫るシーンは描けないんだということもわかります。
個人的に面白かったのは、コマの枠線が人物よりも後ろに行くことが多いことです。
人物の肉体のみでコマ割りと視線誘導が成立していることもあるくらいです。

あとは、自分の目的に沿って、自分のやりたいことと相談してみましょう。
何かコマ割りについて考えるきっかけになっていれば幸いです。

次は「技編」その③物語と演出編(仮)でお会いしましょう。

(啄む亭血液法師)

いまさら漫画を描く人のための心技体ー技編①ーコマ割りの基本

漫画を描きたい。しかし描けなかった。
もう人生は漫画を描くルートから外れてしまった。でもまだやりたい。
そういう「いまさら漫画」をやりたい人のために
いまさら漫画描きのための「心技体」を書いていこうと思います。
今回は心技体の「技編」その①コマ割りについて。

自分の備忘録も兼ねて、自己と対話しながら書いているので、
自分を戒めるために語調が荒くなることがあります(予防線)。
自意識の痛さはご了承ください。

また、前置きとしてわたしは絵の上手くなる方法を語れません。
まだ大した実力もなく、人それぞれの方法論があるので。

それでもいいって方のみ
よろしくお願いいたします。

2、「いまさら漫画」の技編

2-1、コマ割りの深淵を覗け
さあ、心を決めたのであれば早速漫画を描きましょう。
そうなったときに最初に躓くポイントは何だと思いますか?

絵が描けない?あっはっは。そんなことは問題ではないです。
絵が描けない人間でも漫画は描けるんです。
逆に、絵が描ける人間でも漫画を描けない場合があります。

それはどうしてか?たぶんコマ割りが難しいからです。

コマ割り、それは
物語の中と外を隔てる不思議な枠線。

誰もその存在に気づかない漫画の無意識。

多くの読者はコマ割りに注目することはありません。
コマ割りはあくまで演出の領域であって物語の領域ではないからです。
物語に関わらないなら重要じゃないのかというとむしろかなり重要で、
また、コマ割りはそれだけで一冊の分厚い専門書があるくらいに
難しい概念であり、テクニカルな要素です。

読者であるうちはコマ割りを意識することはありませんが、
わたしたちはそれについて否応なし考えなければなりません。

コマ割りについて考えることは「時間とは何か?」という
哲学的な話にもなるんですが(冗談じゃなくそう思ってます)
一旦は簡単に問い直しましょう。

ーぶっちゃけ1ページに何コマくらい必要なのか?

正直、ここが一番最初に引っかかるポイントだと思います。
しかし、多くの漫画を読んで結論を出しました。
6コマです。6コマくらいがいいです。
もちろん実際には増えたり減ったりするんですが、
まず6コマくらいで配置してみて、
そこから調整するという考え方が楽だと思います。
指標がないと難しいですからね。

ー6コマって言われてもどう割るかわかんないよ
まずは3段です。ページに二本の枠線を引いて段を三つを作ってください。
じゃあ3段2コマずつという配置になるのかというと、ちょっと違います。
メリハリがつきにくいので3段2コマずつはストーリー漫画には向きません。
ストーリーを描きたい方は3段2コマ構成は積極的採用しない
ことになると思います。

自分が描いたFeteの二次創作で使っていた例がありましたが少し特殊な使い方です。
二つのものを対比するという使い方のようです。
また、コマの形でメリハリがつかない代わりに
カメラの寄りでメリハリをつけようとしています。

ー何故、3段が基本と考えるのか?

これは個人的なバランス感覚も含んでいるのですが、
実感として今の漫画は3段が多いと思います。
3段構成はスペース的にちょうどいいので
平坦なシーンでは使いやすいんだと思います。
何か良い例がないかなとジャンプを読んでいたら、
たまたま読んだ回のワンピースはほとんど3段構成でした。

何故3段が多くなるのか、より具体的に把握するために
2段と4段のメリット、デメリットを確認してみましょう。

ー2段構成はどういうときに使うか?
2段構成を基本としている漫画は実は結構あります。
スマホでの視認性を高める目的で
Twitterでの公開を前提にしている漫画とかは
2段構成を使っている人が多い印象です。

「かわいい後輩に言わされたい」など、
ラブコメジャンルで有名な川村拓さんの漫画が好きで
個人的にそのラブコメ生産速度がすごいと思っているんですが、
見てると二段構成のページが結構多いです。
これをすることで女の子キャラの登場のしかたがダイナミックになるんです。

ただ、大味な読み応えになってしまうというデメリットがあると思います。
Twitterはインスタントな読み物が好まれるのでむしろそれでよいのですが、
たとえば書籍化(同人誌化)することを考えたときには、少し目立ちます。

コマ数の少なさは、セリフの少なさ、ひいては内容の少なさに直結します。
これは個人的な意見ですが、本にしたい場合に限り、内容は多いほうが戦いやすいです。
まあボロも出やすいんですが、想定しているのは同人誌なので
やりたいことはちゃんと詰めたほうが、作る側も読む側も満足感が高いと思います。

そういうこともあるので2段構成は重要な場面でのみ使いましょう。
絵で魅せたいシーンとか、決め台詞のシーンですね。
下の僕が描いたページもクライマックスのシーンです。

ーでは、4段にしたらどうか?

藤子・F・不二雄の漫画を読むとほとんどずっと4段構成なんですが、
今の時代としては積極的に採用できないと思います。
二つ理由⁼デメリットがあります。
①読者が4段構成の話の密度に耐えられない(とおもう)。
②技術的に4段の狭さに耐えられない

①について、ついてきてくれるファンがいる方ならいいのですが、
ふつうは好意的に読んでくれる方ばかりではないので、
ぼーっとしてても読めることを意識すると、4段は多いなあとおもいます。
②について、現代は人物の書き込みが多い作画が主流なので、
ある程度スペースがないと描きにくいです。
キャラの身体のバランスも見失うと思います。
技術がある人は別にいいけど…

今度出す漫画の序盤のページを持ってきましたが
4段構成にして絵の情報量を増やす代わりに
文字の情報量と展開をめちゃくちゃ減らしていますね。
4段にすることによほどの恐怖心があるようです。

わたしは4段構成は特別なとき以外はしないのですが、
キャラ同士が少し長めの会話するシーンなんかは
4段にして淡々と進めた方が間延びしなくていいかもしれません。
会話のシーンは人物のバストアップを配置するだけでも状況が伝わるので
描きやすいと思いますしね。

とまあ、2段と4段の特徴を考えた結果、
3段くらいを基本構成として、
密度上げたい時は4段、下げたい時は2段で
メリハリがつきやすいんだと思います。
1段とか5段とかはもうあまり想定しなくていいので後述します。

ー結局6コマで、3段で、メリハリってどうやればいいんだよ

百聞は一見に如かずなので、三段で、6コマのページを見てみましょう。
「厳密には4段じゃね?3段目の中に4段目があるから…」
と思われるかもしれませんが、時間の流れとしては3つなので3段と考えます。
段ごとのコマ数としては、1-1-4で、メリハリをつけてるみたいです。

これはたとえ話なのですが、
プレゼン資料を作るときは1スライド1メッセージにしろとかって言われませんか?
あるいは論文書くときには「一文一義」で書けみたいなこと言われませんでした?
それと似たようなことで、
漫画は1段で一つの「時間」が流れると考えると
考える方も読む方もわかりやすいんですよ。

今回のページ例の場合は
①人質を開放する
②それを険しく見つめる
③後悔する
という三つの動きで段分けされていると思います。
4段目は「③後悔する」の時間内での内情のシーンなので、
段分けには含まないという考え方をしています。
というか、左下の2コマなくても問題なく成立するでしょ?

ーでも時間の分節のしかたがわかんねえよ
そういう方は、主体の感情で分節すると考えればいいです。
漫画というのは結局は感情を伝えるメディアだと思ってるので
喜怒哀楽の感情が切り替わるところで、コマを割れば良いと思います。

さきほどの例でコマ割りを振り返ると、
①感情不明
②怒ってる…?
③後悔してる

みたいに感情⁼時間で段を分節していることがわかります。
わたしはこの手の話をちゃんと書いてある本を読んだことがないのですが、
わたしが漫画を読んでいる限り、結構普遍的で応用がききやすい方法論だと思っています。
「金色のガッシュ!」を読み返していた時、
コマの切り替わりでガッシュの顔が喜怒哀楽コロコロ変わるので
感情豊かなキャラクターは漫画映えするなあなどと思いました。
これは余談。

漫画によっては時間⁼感情でコマを分節する方法論をかなり徹底しています。
このコマ割り指導しているひとがどこかに絶対にいると思います。

想定よりも話が長くなってしまったので、
一旦話を打ち切ります。

(啄む亭血液法師)

いまさら漫画を描く人のための心技体 心編

漫画を描きたい。しかし描けなかった。
もう人生は漫画を描くルートから外れてしまった。
そういう「いまさら漫画」をやりたい人のために
「いまさら漫画」の「心技体」を書いていこうと思います。
自分の備忘録も兼ねて、自己と対話しながら書いているので、
自分を戒めるために語調が荒くなることがあります。
自意識の痛さはご了承ください。

1、「いまさら漫画」の心得編

1-1、絵のクオリティに囚われるのはやめろ。

絵を描くのが初めての人。漫画を描くのが初めての人。
二つのパターンがあり得ると思います。
そのどちらの場合においても、言えることがこれです。

「絵のクオリティに囚われると漫画にならない。」

この提言は言葉がシンプル過ぎるため、反論、反発が考えられると思います。例えば、
 ークオリティが高くないと読んでもらえないじゃないか。
 ー向上心をもって臨まないでどうするの? 
 ーある程度は頑張らないと恥ずかしくて出せない…

わかります。
でも、私の考えとしては、
 ー最初から読んでもらえると思うな。
 ーまずはやれ。
 ー恥ずかしくても出せ。
です。

何故このようなことを強く言っておく必要があるのか?
理由は、我々の目があまりにも肥えているからです。
我々は基本的に商業的な作品を見ています。
(近頃はSNSでアマチュアの作品を見ることもありますが、それはいったん置きます)
絵がとても上手い漫画家、そうでもない漫画家、下手だと思う漫画家…

何人か想像しましたか?
はっきり言って、今思い浮かべた人に、追いつけることは一生ありません
特に「絵を描いたことがない」地点から漫画を始める人は複数の理由で絶対に無理です。
第一に絵はすぐには上手くならないからです。これが最も大きい理由。
次点でコマ割りと台詞回しです。
どれもかなりの高等技術です。しかもトライアンドエラーでしか身につかない。。
自らの目に触れる程度に有名な作品は、試行錯誤を通過した方々の作品なので、
追いつくのは無理です。というか、その希望は捨てておいたほうがいいです。
ちなみにこの手の話はまとまった本が全然ないです。

また、「絵を描いたことがある」という人は
「絵」という難関をクリアしているおかげで少し可能性がありますが、
漫画を描くにあたっての考え方は、イラストとはかなり異なるのでちゃんと考えないと無理です。
少なくとも、人物ひとりの「絵」を描くのに三日以上かける考え方だと時間が足りなくなります。
通常、漫画1ページ内に3~6コマ程度のコマがありますから。
最低でも、絵の「シンプル化」「パターン化」をして速度を上げる必要があります。
一枚絵で発揮できる実力の50%も出せないと思ったほうがいいです。
本気を出すとしても決めゴマだけです。

他人の漫画を買ったときに「表紙詐欺!」って思ったことありませんか?
そういうことです。漫画はクオリティよりも時間が命なんです。
時間がすげーーーーーーかかるんです。

なのでまずクオリティはあきらめましょう。
ただ、この諦めというネガティブから
ポジティブな行動に変換していきます。
「じゃあ自分の出来る範囲で、出来るだけ頑張るか…」と。
端的に言えば、もうぜんぶ手癖で描け!!

「いまさら漫画」の心得その①
「とにかく完成させろ」です。
いかに見苦しい思いをしても他人と比較するな。
完成させた子はそれだけで一等賞です。
かわりに、未完成は死DEATH。

もう心が折れましたか?
やる人はどうせいつか立ち上がるので折れても大丈夫です。
もしあれなら、島本和彦先生の「熱血漫画家十訓」を調べてみて。やる気出ます。

わたしからは一つだけ、「いまさら漫画」をはじめた一人として慰みを。
漫画という媒体はそもそも極めて読みやすいです。基本的に子供でも読めてしまうくらいに。
ミニマムな設計としても、キャラクターの顔があり、言葉があるだけで漫画になる。
絵が拙くても、言葉の意味が通っていて、かつ共感可能であれば読まれます。

人はそもそも漫画が大好きだから。
安心して始めましょう。一緒に。

1-2、恥をかく癖をつけろ

さきほども言ったことの一つですが、重要なポイントなので詳しく書きます。
作品はSNSでもなんでもいいので、この世に提出するつもりで描いてください。
そして絶対に出してください。

漫画を始めるにあたってつまずくポイントがいくつかあります。
 ー出したけどあまり反応がもらえなかった。
 ー作ったけど恥ずかしくて出せなかった。
 ー納得いかなくて作品を完成させられなかった。

ケース①出したけどあまり反応がもらえなかった。
出した人は良いです。覚悟がキマッています。
反応がもらえるまでやればいいだけです。季節感や流行りを意識したり。
Twitter派の方は他人に共感しやすいようなスタイルの漫画も検討しましょう。
pixiv派は共感よりも性癖を優先してもいいかも。あそこは変態が多いから。
このタイプは続けるだけでいいです。素敵です。

ケース②作ったけど恥ずかしくて出せなかった。
冷静になり過ぎです。「いまさら漫画」を描き始めた我々は
クオリティを気にしてはいけません。完成したら即提出が鉄則です。
しかしそれが無理なら、優しい身内に見せてみましょう。
読んでもらえること自体もうれしいことですが、
人から感想を一言でももらえることの喜びは何にも代えがたいです。
(辛口っぽい人はやめてください。大抵の人間は漫画を描く苦しみを知らず、また厳しさ=優しさと勘違いしています。)

恥ずかしくて仕方ないかもしれないけど、
恥を感じるならそれはあなたが頑張って作品を作った証拠です。
適当に描いた漫画には恥は生まれません。
「なんでこんなくだらないものを一生懸命生み出してしまったんだ」という恥の感覚は
むしろ誇りに思うべきです。あなたが「本気」だった証拠ですから。
あなたは「漫画を描かない」人生からの方向転換、その第一歩を踏みしめました。

また、可能であれば、思うような結果が得られなかった
悲しい作品でも自分だけは愛してあげてください。
僕にもそういう作品があります。

ケース③納得いかなくて作品を完成させられなかった。
一番問題なのはこれです。完成する前から恥をかく未来が見えています。
見聞色の覇気を鍛えすぎです。未来を見るのはやめろ。
自分のことだけを見つめて、自分の上昇値だけを見てとにかくかけ。
そういう場合はまず絵の練習に切り替えろ。
恥をかく訓練のために絵をまず投稿しろ。0いいねの痛覚を麻痺させろ。
どう頑張ってもそこに「本気」がある限り恥はあります。
商業漫画家だって恥ずかしいらしいですよ。いわんやをや、です。
ひいこら言いながら完成させましょう。話はそこからです。

実体験として、わたしも初めて描いた漫画は「恥」の気持ちでいっぱいでした。
2019年夏、漫画を描きたくてニートになりました。
1か月くらいデッサンの練習をして、
2か月と少しかけて24ページの漫画を描きました。
https://www.pixiv.net/artworks/81311549
これは当時の作品です。コミケにもっていきました。
しかし恥ずかしすぎてコミケの当日までほとんど告知できませんでした。

当時の最大限の力を発揮したと自信をもって言えます。
しかし、だからこそ、否定されることが恐ろしくて
人に「見て」と言うことが出来なかった…
ただ、この日に作品を出さなかったら、
いま同人活動はしていないと思います。
それくらいの価値がありました。

「いまさら漫画」の心得その②「とにかく出せ」です。
出すことを想定するから本気になり、恥をかきながら強くなれます。
みんな同じ道を進んでいると思います。頑張りましょう。

1-3、まっとうな生き方を(すこし)諦める

漫画描きにどのようなイメージを持っていますか?
時間に追われて、締め切りギリギリ。
みたいなイメージ持っていませんか?

それはまず、正しいでしょう。
とりわけ週刊漫画家の生活は常軌を逸しています。

ストーリー漫画では16~22ページを一週間で描きます。
とうぜんですが、普通の人間はこの速度で漫画を描けません。
ギャグマンガは13~15ページで、絵の密度も低めですが、まだ多すぎる。

最近はweb漫画があるので、雑誌の掲載幅を度外視できます。
1話8ページとか、1話を前編後編にわけて11ページずつ、とかもあります。(これはマンガワンです)。
しかし、これも毎週必ず仕上げてくる人ばかりではないです。とにかく異常なのです。

遅くに漫画を描き始めた人はみな感じることかと思いますが、
漫画描きは異常者の集まりです。かなり体力を使う活動です。
これを踏まえたうえで、われわれ漫画素人が想定しなければいけないことがあります。

「いまさら漫画」を始めようとする方のほとんどは
一日中、年がら年中、漫画に割ける時間があるわけじゃないということです。
本業のお仕事があるか、フリーター、あるいは大学生、高校生……
どなたも最低6~8時間は「やるべきこと」があるんじゃないですか?
食事や睡眠時間、その他を削ると……
正味の自由時間って、どう頑張っても4~6時間じゃないですか?
「やるべきこと」が忙しければ、もっと少ないと思います。

通常、その自由時間は1日の疲れを癒すリフレッシュに使うと思います。
ゲームをしたり、本を読んだり、テレビや動画を見たり、
あっという間に時間は過ぎて眠りにつき、また次の日を生きると思います。
その時間は本当に必要です。生活を壊してまで描くのは健全ではなく
また、瞬間的に頑張っても漫画はまったく完成せず、
ペースを乱せば、継続すること自体に難が出ます。

よって、わたしの提案はこうです。
「いまさら漫画」を始めようと考えるのなら、
ゲームの時間、本の時間、テレビ動画の時間、何かを諦めてください。
そして、自由時間のうち何時間かを漫画に使ってみてください。
一日「やるべきこと」を終えて、さらに自分に鞭打って自分の無能と戦ってください。

ペン入れは1ページも進まず、
下書きすら半端、棒人間のネームでギリギリ
みたいな風になると思いますが
それでも自分の人生に漫画のスペースを作ってみましょう。

「いまさら漫画」の心得その③「時間を作れ」です。
やりたいことを諦めろと言いましたが、嫌なことばかりではありません。
キャラクターと向き合って、
その愛すべき存在がどんな顔をして、どんなことを話すのかを想像する。
そしてそれが自分の形になっていく様は癖になります。
その時間はほかの娯楽にも勝る、尊い時間になります。

わたし自身の話をしておきます。
わたしはどうしても漫画を描きたくて、また描ける確信があったので
自分のペースを見出すために最初に職を捨てました(職を捨てるのは極力やめましょう)。

24ページの漫画を描くためにおそらく300時間くらい使っていたと思います。
制作期間は2か月ちょいくらいだったのですが、毎日5時間ほど描いていたと思います。
ニートのくせに少ないじゃん!もっと時間あるだろ!と思うかもしれませんが、
しかしこれでも結構な苦痛を伴いました。
遊んで食って寝てをしてもいいのに
自分の下手な絵を見つめながら延々と描いているのです。
ただ、その時は自分の漫画が褒められることだけを想像し
最悪、自分が読みたい物語が読めることをやりがいとしました。

次の年、60ページほどの漫画を描きました。
3か月くらい使って、休みの日も毎日描きました。
この頃は毎月80~100時間くらいバイトをしていたのですが
作画時間は毎月120時間くらいありました。
毎日3~4時間、休日は8時間描くこともありました。
締め切り直前は寝ずに描きました。クリスマスは消えました。
バイトしながらだとそもそも疲れているので、
定職につきながらもっと難しいんだろう、と思いました。

今年は職業訓練校に通いながら、
47ページの漫画を描こうとしています。
今年こそは就職して、仕事をしながら漫画を描けるように
シミュレーションのつもりでやっています。

来年以降は毎年42ページ描いて、
同人誌を二冊ずつ発行するのが目標なのですが、
漫画は本当に時間がかかってしんどくて
やっぱり死ぬほど楽しいです。

「いまさら漫画」の心技体/心編 おわり
技編につづく。

(啄む亭血液法師)

二次創作を行うことについて

わたしの同人活動の拠り所は二次創作にあります。

二次創作は法的にグレーな活動であり
多くの活動は公式の「黙認」によって成立しています。
また、公式により二次創作に関するガイドラインがある場合は
それに沿った活動が行われなければなりません。

わたしは「TYPE-MOON作品」、とりわけ「Fate/stay night」の二次創作を描くことを生きがいとしています。
よって、わたしは「TYPE-MOON作品の著作物などに関するガイドライン」を熟読し、それに沿った形で活動を行っています。

このサイトの主目的は「漫画を描く」ということについて
深く考え、発信し、自らの糧として
今後の活動をより継続的かつ精力的に行うことにありますが、
自らの二次創作作品についても触れることがあります。
同人誌の告知も行いたいと思います。

このような形での個人サイト運営が二次創作者として正しいのかどうかは正直よくわかりません。
ネット上には同人学級会のようなものもあり、公式のお目こぼしで成立している活動なのだから目立つ行動はしないようにすることがベター、かつ無難だと言われています。また、村社会的に逸脱行動は輪を乱すものとして嫌われます。
無名な限りにおいては問題化されえませんが、目立とうとする動きそのものの反感はありえ、自由に活動をしたい身としてはその精神的圧迫は本意ではありません。

よって線引きはしておきたいと思います。

わたし自身は公式作品に対して最大限の愛と熱意を注いでいき、
自分の主目的を逸脱することなく活動をすることを心がけますが、
万が一、自らのなにかの行動に対して
ガイドラインを逸脱していると公式に判断された場合には
即座にサイトの運営を停止、または問題箇所を修正し、
場合によっては同人誌の頒布も停止、すべて
公式に出された意向に従うことにします。

この線引きにおいて、本サイトは運営したいと思います。
よろしくお願いいたします。

いつもにらめっこしている型月公式ページ
「TYPE-MOONー著作権について」
http://typemoon.com/copyright

(啄む亭血液法師)

啄む亭血液法師のブログを開設しました。

啄む亭血液法師と申します。初めまして。
ご存じの方はこんにちは。

わたしはFateシリーズの二次創作を中心に
同人活動をしているものです。

わたしはTwitterとpixivで主に活動している
無名な同人漫画描きなのですが
やや理由があって個人サイトを開設することにしました。

このサイトでは
「イラスト投稿」や「同人誌の告知」のほかに
「漫画の描き方、売り方に関する考察」を
発信していきたいと思います。
何かしら引っかかるものがあれば幸いです。

 

私には、夢があります。
端的に言えば
自分の作品をもっと読んでもらうことです。

今は、他人のふんどしで相撲を取るような
二次創作漫画しか描けない人間ですが
もっとずっと漫画を描き続けて
自分の好きなものを発信して
楽しく人生を生きたいのです。

このサイトはその目的のために
作られたようなものです。

ひっそりとやっていきますので
どうぞよろしくお願いします。

 

(啄む亭血液法師)