いまさら漫画を描く人のための心技体ー技編②ー特殊なコマ割り

(前置き略)

ここでは特殊な漫画コマ例を紹介したいと思います。

前回、コマ割りについて基本は3段構成にし、
決めシーンでは2段、対話が多いシーンでは4段にするのがいいと書きました。
また段分けの方法としては、1段で一つの時間⁼感情が動いているようにすると
書き手も読み手も整理が楽だという話もしました。

正直、それ以外の段数はほとんど使い道がないので、
想定しなくてもいいとは思うのですが、検討してみるのは面白いかも。
というかわたしがコマ割りを考えるのが好きなだけです。

さて、自分自身は真正面から1段と5段をやってみた例がないのですが、
いちおう、検討した痕跡があったので、紹介してみます。
ー5段のページってどんな感じ?

段ごとの時間⁼感情の分節としては、
①図星をつかれた
②と③、困惑と衝撃
④状況変化
⑤↑に対する反応

という感じみたいです。
特殊な状況なので、どうしても段数が増えてしまったのですが、
それでも②と③はコマが重なっているだけあって、ほぼ同じ時間が流れています。
心情的にも②と③はほとんど変化はないです。

考えられることは、5段はやっぱり多いってことです。
5段構成にするときは最低でも1段を補助的な役割にとどめるか、
いっそページを分けた方がよさそうです。
読者もついていけなくなると思うし、じぶんも混乱してくると思います。

わたしの場合は、目まぐるしい状況変化についていけない感じが出したかったので、
無理やり1ページ内に収めたのですが、ちょっと厳しいなあという気持ちもあります。

ー1段のページってどんな感じ?

まずは単純に、キャラをアップで描いて
衝撃を表すワンピース空島編のエネルみたいな例がありますね。
それは説明するまでもないので、今回は
コマぶち抜きの人物を用いた特殊な1段をみていきましょう。

「いやだから4段もあるじゃん」と思ったかもしれませんが、
コマぶち抜き人物がいるおかげで、実際は一つの時間しか流れていません
だから実質1段。1段だと思う。。。ごにょごにょ

わたしの漫画のページを例にするとわかりにくいかもしれないので、
「バキ コーラ」でググって出てきた画像を見てください。
これは間違いなくコマぶち抜き人物を用いた特殊1段ページだと思います。

バキがコーラを飲んでいるという一つの時間が初めにあって
その中に「炭酸抜きコーラについて解説する」という
別の内的時間が流れている。という構成と言えます。
――大したものですね。

コマぶち抜き人物の手法は特殊っちゃ特殊ですが、
使っている人がとても多い、基本の一つだと思います。
人物をダイナミックに描いたうえで、状況も詳細に描けるので
見た目もよく、中身のバランスも良い……
テニスの王子様とかでも結構使ってたんじゃないかな。たぶん。

ただし、コマぶち抜き人物のページをやるには条件があります。
1ページ分の高さが使えるとなると、ほとんどの場合、
人物の全身を余すことなく描くことになります。
当然の帰結として、人物の全身像を描けないと苦しい思いをします(体験談)。
多くの方は、顔を描くのが一番得意で、次がバストアップ、
全身を描くのはちょっと苦手だと思うので、練習したうえで使いましょう。

あるいは、コマぶち抜き人物を使って、
ページ自体は2段とか3段構成にしましょう。
コマぶち抜き、を多用していた時期があるので見てみましょう。

 

これらを描いた時はなんか、「人物がコマを飛び出してるとお洒落だな…」くらいの認識でした。
ただ、「コマぶち抜き人物と、それが跨っているコマでは同じ時間が流れている」
という基本原則はかろうじて意識しているみたいです。

ーそのほか特殊例
コマ割り、とりわけ段組みの方法についてこれまで書いてきたんですが
実際に漫画を読んでいると、その方法をしっかり守っている人ばかりじゃないんですよね。
個人的に、コマ割りはそれだけで一つのアートだと思っているんで、
本当に思いもよらないやり方がたくさんあります。

これは最近描いているページですが、
明確に段分けしていなかったり(左)
完全に縦割りしてみたり(右)、
やったことがないことに挑戦してみてます。
やっぱり一回取り入れてみないと
気が付かないことがあります。

面白いコマ割りをもっと考えたいという方は
有名な作品をコマ割りに注目して眺めてみると
なにかのアイデアが浮かぶかもしれません。
段ごとにどれくらいの文字数があるだろう、
吹き出しはいくつあるだろう、とか。
プロのバランス感覚を学びましょう。
コマ割りの意図を分析してみましょう。
すると、コマ割りは自由に楽しくできるようになると思います。

コマ割りを考えるうえで個人的なオススメとしては、
ハンターハンター、チェンソーマン、呪術廻戦です(すみません、ジャンプっ子なんです)。

呪術廻戦は、色んな漫画のストロングなコマ割りを
かなり研究して取り入れてる感じがあるので、
素晴らしいコマ割りの見本市のようです。

チェンソーマンはオシャレ割りのぎりぎりを攻めているので
漫画慣れしていないと内容理解が追い付けなくなりますが、
コマ割りはここまで自由にできるんだ、という気持ちになります。
印象的だったのは、人間の首や腸でコマを割っていたことです。

ハンターハンターはもう巧過ぎて言語化できないです。
よく読み返すのは25巻と34巻です。

心情描写に関するコマ割りとしては
岩明均先生の漫画がオススメです。作品は寄生獣とヒストリエが有名。
基本のコマ割りは平坦なことが多いのですが、
夢の中の描写と心情描写が異常に上手いです。
おすすめはヒストリエ3巻、4巻、10巻です。
どこがおすすめのシーンかは一発で分かります。

あとはエロ漫画です。真面目に。
エロ漫画のコマ割りは大抵めちゃくちゃ面白いです。
エロ漫画はその特性上クライマックスのシーンが長いので
ダイナミックなコマ割りが多いですし、読み手に直接的に訴えかける方法を教えてくれます。
結局は欲望に忠実に描かないと真に迫るシーンは描けないんだということもわかります。
個人的に面白かったのは、コマの枠線が人物よりも後ろに行くことが多いことです。
人物の肉体のみでコマ割りと視線誘導が成立していることもあるくらいです。

あとは、自分の目的に沿って、自分のやりたいことと相談してみましょう。
何かコマ割りについて考えるきっかけになっていれば幸いです。

次は「技編」その③物語と演出編(仮)でお会いしましょう。

(啄む亭血液法師)

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